Japan
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| name=アルカ | nativename=arka | iso3=art | familycolor=人工 | fam2=芸術言語 | script=幻字 | agency=人工言語学研究会[1] | creator=セレン・アルバザード | date=1991年 | speakers=若干名 | setting=カルディアの国際補助語 | posteriori=アプリオリ言語

アルカ (arka) は、セレン・アルバザード(1981-)らが作成した架空の世界カルディアを舞台にした小説漫画ゲームなどに登場する架空言語である。


特徴[]

アプリオリ言語としての背景となる文化や風土もゼロから構築している。これまでに22年を掛けて作者により2013年5月20日18時55分の時点で19,130語の語彙が作られているためアプリオリ芸術言語としては、大規模な言語となっている。

文字[]

Arka-hacm-lemal

アルカの表記に用いられる幻字

アルカの文字は幻字と呼ばれ、20個の子音と5個の母音が存在する。

音韻[]

子音:t, k, x, s, n, v, f, m, d, g, p, b, h, y, c, r, z, j, w, l

母音:a, i, o, e, u

xはシャ行。cはふるえ音のラ行(べらんめえ調のラ行)。 他はローマ字読みと同じ。例えばyはヤ行でjはジャ行でwはワ行。

母音[]

a, i, o, e, u, qの6母音存在するが、シュワーのqは音素としてはほとんど表れることはない。 オノマトペ感嘆詞(hqm /həm/ へぇ)や、子音連続で読みにくい場合(tikn /tikən/ 竜)、子音で終わる語の末尾(arbazard /aɹbazaɹdə/ アルバザード)などに表れやすい。

前舌 中舌 後舌
非円唇 非円唇 円唇
i /i/   u /u/
半狭 e /e/  
q /ə/
半広     o /ɔ/
a /a/

子音[]

アルカにおいて発生しうる子音の音声は27音、弁別性のある音素は20文字にts/ʦ/, tx/ʧ/を加えた22音存在する。

nは直後の子音が[p],[b]のときは[m]、[t],[d]のときは[n]、[k],[g]のときは[ŋ]、[s], [z], [l], [r], [ɾ], [ɹ]のときは[N]になる。

cは、歯茎ふるえ音[r]で発音するのが標準だが、おとなしく丁寧な発音を心がけるときは歯茎はじき音[ɾ]になる。

hは、無声声門摩擦音[h]が標準だが、ihのような組み合わせになった時は無声硬口蓋摩擦音[ç]、ah, ohのような組み合わせになった時は無声軟口蓋摩擦音[x]で発音する。

唇音 舌頂音 舌背音 咽喉音
両唇音 唇歯音 歯茎音 後部歯茎音 硬口蓋音 軟口蓋音 口蓋垂音 声門音
破裂音 p /p/ b /b/ t /t/ d /d/ k /k/ g /ɡ/
鼻音   m /m/   n /n/   n /ŋ/   n /ɴ/
ふるえ音   c /r/
はじき音   c /ɾ/
摩擦音 f /f/ v /v/ s /s/ z /z/ x /ʃ/ j /ʒ/ h /ç/   h /x/   h /h/  
接近音           r /ɹ/                
接近音   y /j/
側面接近音   l /l/
有声両唇軟口蓋接近音 w /w/
破擦音
歯音 歯茎音
無声音 ts /ʦ/ tx /ʧ/

語彙[]

自然言語から語彙を借用していないアプリオリ型である。一部の基本語は音象徴を元に構成される。例えばeは水を象徴するため、eri(血)、ena(涙)などにはeの音が入る。なお、単語の大半は合成と混成による。例として、ena(涙)はe(水の音象徴)とna(心)の合成である。

2013年5月20日現在、19,130語の語彙を持ち、アプリオリ型芸術言語では類を見ない膨大な語彙数を持つ。

文法[]

基本語順はSVO型。ti(you) siina(like) oma(dogs)の要領。

修飾は後置。miik(apple) har(red)の要領。

品詞は名詞、動詞、形副詞、純詞、格詞、接続詞、感動詞の7種。

関係詞は存在せず、接続詞で表現する。 各品詞の意味と用法は公式サイトを参照のこと。

代詞[]

代詞とは、代名詞指示詞、指示形容詞を兼ねる品詞であり、疑問・全体・部分・特定・任意・選択・零・指示が存在する。人称代名詞に相当する人称代詞は、指示代詞に分類される。指示用法に用いるときは、後置修飾が原則のアルカでも例外的に前置修飾が行われる。

指示代詞[]

アルカの正式な用語では、指示代詞には人称代詞が含まれるが、ここでは人称以外の指示代詞の説明をする。 指示は、近称tu(これ)と遠称le(この)の二種類ある。日本語の「それ」や英語の"it"は近称tuに含まれる。複数、所有格、所有格複数に屈折形がある。また、清楚な女性が話すユンク位相(yunk)と明るく可愛い女の子の位相であるミリア位相(milia)、総称して大人しい女性が用いる位相であるレンテ位相(rente)では特別な屈折形を使用する。

指示代詞は、指示代詞は「これ」「あれ」のような事物を表す代名詞だけではなく、「この」「あの」のような指示形容詞としても機能する。この場合、後置修飾が原則であるアルカでも例外的に、前置修飾を行う。

  • tu elen (この机) le elen (あの机) tuus elen(これらの机) lees elen(あれらの机)

指示代詞の所有格は、修飾する語彙とは別の単語の代用として用いられる。つまり、e tu ra(この家の)を短縮して、tuul(これの)と言い換えるような時に用いる。

  • elen xa ra.(机が家にある)
  • elen tuul et kai (これの机は大きい) = elen e tu ra et kai (この家の机は大きい。)
指示代詞
数・格\遠近 近称 遠称
単数 基本形 tu これ/この le あれ/あの
所有格 tuul これの leet あれの
中立位相の複数 基本形 tuus これら lees あれら
所有格 tuules これらの leetes あれらの
レンテ位相の複数 基本形 tutu これら lele あれら
所有格 tutul これらの leent あれらの

人称代詞[]

アルカの人称代名詞を意味する人称代詞は、性別、性格、社会階層、出身地方、敬意の有無によって10種類以上の体系が用意されているが、ここでは中立位相(seet)について述べる。

アルカの一般的な用語でいう人称代名詞に相当する人称代詞は、所有格複数、所有格複数に屈折語形が存在する。所有格以外の格は、語順や基本形に格詞(前置詞)を付加することによって表される。

人称は、一人称an、二人称ti、三人称近称luと三人称遠称la、四人称elがある。四人称は、フランス語のon、エスペラントのoniに相当するもので、「一般・不特定の人、人々、誰か」を意味し、el xen er(人は水を飲むものだ)のように、一般論や格言を述べる際の主語に用いる。四人称には単数と複数の区別はない。

中立位相(seet)
人称 一人称 二人称 三人称近称 三人称遠称 四人称
単数 基本形 an ti あなた luこの人 la あの人 el
所有格 ant 私の tiil あなたの luut この人の laat あの人の eles 人の
複数 基本形 ans 私たち tiis あなたたち luus この人たち laas あの人たち el 人々
所有格 antes 私たちの tiiles あなたたちの luutes この人たちの laates あの人たちの eles 人々の

『紫苑の書』、『夢織』で頻出する明るく可愛い女の子が用いる人称であるミリア位相(milia)についても併記する。

ミリア位相(milia)
人称 一人称 二人称 三人称近称 三人称遠称 四人称
単数 基本形 non tyu あなた luこの人 la あの人 el
所有格 noan 私の tuan あなたの luut この人の laat あの人の eles 人の
複数 基本形 lena 私たち lilis あなたたち luan この人たち lain あの人たち el 人々
所有格 lenan 私たちの lilin あなたたちの luant この人たちの laint あの人たちの eles 人々の


その他代詞[]

そのほかの代詞に、疑問・全体・部分・特定・任意・選択・零があり、所有格と不定、有生、無生の3つ名詞クラスによって屈折語形が存在する。使用実態からみると、名詞クラスの屈折は、疑問と譲歩を除いて、有生、無生クラスを用いることは稀であり、不定クラスを用いる場合が多い。

分かりにくい特定、任意、譲歩の区別を述べると、特定とは、特定の誰かのことを示し、日本語では「とある人」「ある物」のように言う物を示す。任意とは、「誰かしら」、「何かしら」に相当するもので、特定されていないものを示す。譲歩とは、「誰であろうと」「何であろうと」に当たるものである。

例えば、果物の集合があって、fit xe vank (ある果物をくれ)と言った場合は、リンゴなどの特定の何かをくれと言っているわけで、別の果物を渡したら不正解になる。fit fi vank (何かしらの果物をくれ)と言った場合は、リンゴでもバナナでもオレンジでも、どれかの果物を持っていけば正解である。fit total vank(何でもいいから果物をくれ)と言った場合は、集合の外にある果物であろうと、腐っていようと構わないようなニュアンスを含む。

代詞
意味・格\名詞クラス 不定 有生 無生
疑問 基本形 - ne to
所有格 - neet 誰の toot 何の
譲歩 基本形 - netal 誰かしら total 何かしら
所有格 - netalet 誰かしらの totalet 何かしらの
全体 基本形 il すべて illan 全員 iltul 全部
所有格 ilet すべての illant 全員の iltulet 全部の
部分 基本形 vei 一部 veilan 一部の人 veitul 一部のもの
所有格 vitte 一部の veilant 一部の人の veitulet 一部のものの
特定 基本形 xe ある xelan 誰か xetul 何か
所有格 xeet ある人の、あるものの xelant 誰かの xetulet 何かの
任意 基本形 fi 何か filan 任意の誰か fitul 任意の何か
所有格 fiit 誰かしらの、何かしらの filant 任意の誰かの fitulet 任意の何かの
選択 基本形 wel どれ wellan どの人 weltul どのもの
所有格 welet どれの wellant どの人の weltulet どのものの
基本形 yuu 何もないもの yuulan 誰もないもの xetul 何もないもの
所有格 yuute 何でもない人の、何もないものの yuulant 誰もないものの yuutulet 何もないものの

格詞[]

格詞(かくし)は、名詞動詞の関係を表す。格詞の後ろには語句も取れる。

英語でいう前置詞に当たるが、格詞がすべて前置詞と同じというわけではない。

主格(sol)と対格(yul)の格詞は基本的に省略されるが、倒置や強調があると省略されない。

よく使う格詞[]

  • sol:主格
    動作主格や経験者などを表す。通常は省略されるが、倒置や強調の際には復活する。
    • yul lu sol an siina(彼のことが私は好きだ)
  • yul:対格
    主に対象を表す。通常は省略されるが、倒置や強調の際には復活する。
    用例は同上。
  • a(l):与格、終点格: 母音で始まる語の前に付くと、alになる。
    1:物や行為を受け取る者を表す。
    • an fitat lei a la(彼に本をあげた)
    2:移動の着点を表す。
    • an lukat al ate(店まで歩いた)
    3:時間の終点を表わす。
    • an axtat lei a durne(私は夜まで本を書いた)
  • i(t):奪格、起点格 :母音で始まる語の前に付くと、itになる。
    a の反対。「~から」。
    • an taf lei i kib(棚から本を取る)
    • an lunas it arbazard(私はアルバザードから来ました)
  • ol:場合格:~の場合に
    「もし」に当たる格詞。接続詞ではない。
    • an ke sil ol la ke van(彼が行くなら私も行こう)
    hot(唯一)を付けることによって「~のときに限り~する」という意味を表す。
    • an ke sil ol hot la ke van(彼が行くときだけ私も行こう=彼が行かないなら私も行かない)
  • ka:場所格
    場所を表す。言語学的にはふつう処格と呼ばれるもの。
    • la miksator ka ra(彼は家で歌っていた)
  • im:時格
    時点を表す。英語のwhenやatなどに当たるが、whenと訳すときでも接続詞にならない。
    • la inator teik im an ke(私が行ったとき、彼はテレビを見ていた)
  • kon:具格/ vit:不具格
    行為に伴う道具を表す/道具を使わなかったことを表す。
    • kilat kon{vit} diol(のこぎりで切った/のこぎりを使わないで切った)
  • ok:随伴格/xed:不随伴格
    行為を行う主体的な仲間を表す/仲間がいないことを表す。
    • ket ok{xed} la(彼と一緒に行った/彼と一緒でなく行った)

格詞の順序[]

明確な順序はないが、例えば下の例文なら次の並びが一番自然である。

なお、格詞が取るのが語でなく節になって長くなるほど、その格詞は後回しにされる傾向にある。

下の場合、im格がim toxelだったら、ほかの格より前に来ていた可能性が十分考えられる。

sol(主格:通常省略) an inat(動詞)yul(対格:通常省略)jan hal(上格) waka kon(具格)flan ok(随伴格)hacn im(時格)xelt ik nok (私は月が出たとき、丘の上で、友達と一緒に、望遠鏡で、空を見た)

動詞[]

人称による変化はない。接尾辞副詞によって時制などを表現する。

否定[]

副詞enを前置して動詞の否定を表す。

  • la ket felka 彼は学校へ行った。 la en ket felka. 彼は学校へ行かなかった。

et(~である)とde(~でない)、til(持つ)とsi(持たない)、xa(ある、いる)とmi(ない、いない)、lax(望む)とris(望まない)、sen(~できる)とvil(~できない)のように、特別に否定形をもつ動詞も存在する。

時制[]

経験過去、過去、現在、未来、通時、無時制の6種類存在する。しかし使用実態からすると、使用頻度が高いのは過去、通時、未来の三種類のみである。

無時制は、時制を意識しないで発言する時の用法で、通常は現在や通時を表す。実例では現在形はこれが使われることがほとんどである。

経験過去は、la til kaz ses(彼はペンを持っていた)のように、自分が見て観測した過去の事例を表し、現在彼がペンを持っているか否かは不明である。一方、過去は、単純な過去も表すが、la tilat laal(彼は母を持っていた)のように、過去にはそうであったが、現在はそうでないというニュアンスを含むことがある。

通時は、faal et hol(太陽が自転する)のように過去、現在、未来を通して行われる動作を表す。これもほとんどの場合、無時制形で表現される。

時制
接尾辞/副詞 開音節動詞 閉音節動詞
無時制 - ke 行く til 持つ
経験過去 ses ke ses 行っていた til ses 持っていた
過去 -at ket 行った tilat 持った
現代 (tur) ke (tur) (今)行く til (tur) (今)持つ
未来 sil ke sil 行くだろう til sil 持つだろう
通時 (lut) ke (lut) (常に)行く til (lut) (常に)持つ

[]

は、行為無相と状態無相の2種類、単行為動詞の場合、将然、開始、経過、完了、継続、終了、影響の7種類、反復動作動詞の場合、再開、反復、中断の3種類の相がある。この12種類のアスペクトのうち、経過-or、完了-ik、継続-es、反復-andの4種類以外の使用例は稀であり、そのほかに将然satと開始kitが時々使われる程度である。

行為無相は、この動詞が動作動詞であることを表す。 fai(faim) (燃やす着火~点火)

状態無相は、この動詞が状態動詞であることを表す。 fai xa (燃えている、点火~消火)

将然相は、「まさに~しようとしている」と言う意味で、動作の準備を行っている。fai sat (燃やそうとしている)

開始相は、「~し始める」で、動作の開始を表す。fai kit(燃やし始める)

経過相は、「~している」で、動作の経過、状態の準備を表す。fair (燃やしている、着火中)

完了相は、「~した」で、動作の終了、状態の開始を表す。faik (燃えた 点火した)

継続相は、「~してある」で、状態の継続を表す。fais (燃えている 点火中)

終了相は、「~でありおわった」で、状態の終了を表す。fai took (燃え終わる 消火)

影響相は、「~であった」で、状態の影響が残っていることを示す。 fai ilt (燃えやしてあった、火の形跡がある。)

再開相は、「~するのを再開する」で、反復動作の再開を表す。baog mak (殴るのを再開する)

反復相は、「~し続ける」で動作を何度も行っている様子を表す。baogand (殴り続ける)

中断相は、「~するのを中断する」で、反復動作の中断を表す。baog daim(殴るのを中断する)

行為動詞と状態動詞の区別用アスペクト
接尾辞/副詞 開音節動詞 閉音節動詞
行為無相 (-em) luna (lunam) 来る lad (ladem) 作る
状態無相 xa luna xa 来ている lad xa できている
単動作アスペクト
接尾辞/副詞 開音節動詞 閉音節動詞
将前相 sat luna sat 来ようとしている lad 作ろうとしている
開始相 kit luna kit 来始める lad kit 作り始める
経過相 -or lunar 来ている lador 作っている
完了相 -ik lunak 来た ladik 作った
継続相 -es lunas 来てある lades 作ってある
終了相 took luna took 来ていたのが終わった(去った) lad took 作ってあったのが終わった(壊れた)
影響相 ilt luna ilt 来ていた形跡がある。 lad ilt 作っていた残骸がある。
反復アスペクト
接尾辞/副詞 開音節動詞 閉音節動詞
再開 mak tau mak 買うのを再開する vad mak 叩くのを再開する
反復相 -and taund 買い続ける vadand 叩き続ける
中断相 daim tau daim 買うのを中断する vad daim 叩くのを中断する。

[]

は、動詞の後に法副詞を置いて表現する。提案のdasとdia、希望のlaxとlan、反希望のrisとrin、意思のvanとfanのように男性位相と女性位相で異なった語彙を用いる例がある。

法副詞 例文
勧誘 xiit ~しましょう in xiit 見ましょう
許可 flen ~してもよい in flen 見てもよい
不許可 xin ~してはいけない in xin 見てはいけない
提案 das an in das? 私が見ましょうか?
ans in das 見ましょうよ
ti in das? 見たらどうですか?
dia non in dia? 私が見ましょうか?
lena in dia 見ましょうよ
tyu in dia? 見たらどうですか?
希望 lax ~したい in lax 見たい
lan ~したい in lan 見たい
反希望 ris ~したくない in ris 見たくない
rin ~したくない in rin 見たくない
義務 fal すべき in fal 見るべき
責任 xaf ~しなければならない。 in xaf 見なければならない
当然 hao ~するのが当然だ in hao 見るのが当然だ
必要 xir ~する必要がある。 in xir 見る必要がある。
必要性大 ax ~したほうがよい。 in ax 見た方がよい
必要性小 fonl ~しない方がよい in fonl 見ない方がよい
不必要 bas ~しなくてよい in bas 見なくてよい
可能 sen ~できる in sen 見られる
不可能 vil ~できない in vil 見られない
意思 van ~しよう in van 見よう
fan ~しよう in fan 見よう
経験 siia ~したことがある in siia 見たことがある

命令と禁止[]

命令と禁止は、文頭に法副詞を置いて表現する。通常、re ke(行け)のように主語は入らないが、入る場合は、re ti ke(お前が行け)のように、命令や禁止の法副詞が主語に先だって配置される事例が多く、使役のsols(~させる)でsols la ke(彼に行かせる)と表現する時と同様の語順になると言うことが分かる。

また、ke lopn!(駅へ行け!)のように、主語も法副詞も省略して、表現することも多い。

常体は命令と禁止命令、敬体は依頼と禁止依頼に分かれる。

命令と禁止
命令 禁止
法副詞 例文 法副詞 例文
常体標準 re ~しろ re ke 行け den ~するな den ke 行くな
常体丁寧 ren ~して ren ke 行って te ~しないで te ke 行かないで
敬体標準 mir ~してください mir ke 行ってください fon ~しないでください fon ke 行かないでください
敬体丁寧 sant ~してください sant kor いらしてください leu ~しないでください leu kor いらっしゃらないでください
myun ~してください myun kor いらしてください

受動態[]

受動態は、能動態の文の主格対格の語彙を入れ替え、動詞に副詞yuを後置して表す。

  • an siina ti. 私はあなたを好む。
  • ti siina yu an. あなたは私に好まれる。

使役態[]

使役態は、「使役者 使役動詞 被使役者 動詞」の構文で作る。

使役動詞には、標準的なsols(させる)のほかに、強制のvars(強いる、強制する)、自由にさせるという意味のyuusがある。

また、使役者が非使役者のために何かをしてあげるというsersもある。

  • la solsat an tau tu. (彼が私にそれを買わせた。)
  • la varsat an ke lopn. (彼が私に駅に行くことを強いた。)
  • la yuusat an axo ka tier. (彼が私に海で自由に遊ばせた。)
  • laal sersat noi sab lisen. (母が息子に靴下を履かせた。)

繋辞[]

繋辞はetをあらわす。

  • an et felan. (私は学生です。)

時制や相の情報が加わる場合は、繋辞etの部分が省略され、接尾辞や副詞だけが残る。

  • an at felan. (私は学生でした。)
  • an sil felan. (私は学生になるでしょう。)
  • an or felan. (私は学生になりつつある)

繋辞の否定はen etではなく、deという特別な語形を用いる。女性言葉ではteを用いる。

  • an de xaxan. (私は教師ではない。)
  • non te xaxan. (私は教師ではありません。)

否定繋辞deは、時制・相を表す場合、通常の動詞と同様省略されることなく接尾辞や副詞が接続する。

  • an det xaxan. (私は教師ではなかった。)
  • an de sil xaxan. (私は教師にならないだろう。)
  • an der xaxan. (私は教師になりつつない。)

再帰動詞[]

アルカの動詞はすべて他動詞である。

そのため、mok(寝る)、skin(座る)、xtam(立つ)等の姿勢動詞、nax(笑わせる)、hau(あくびさせる)などの動詞は、対格にnos(自分)を取る再帰動詞として表現する。

  • an skin nos (直訳:私は自分を座らせる 意訳:私は座る)

ただし、自分自身を対格にとることが明確な場合、nos(自分)が省略されることが多い。

  • an skin(私は座る。)

自動詞[]

アルカに他動詞しかなく、自動詞は存在しない。「落とす」は存在しても「落ちる」に当たる動詞は存在しない。「落ちる」のような語は、「繋辞et+動詞」で表現する。

  • an met hat.(私は皿を落とす。)
  • hat et met.(皿が落ちる。)

「繋辞et+動詞」の自動詞用法で否定・時制・相等を表現する場合、繋辞etの部分が変化する。

  • hat de met.(皿が落ちない。)
  • hat at met.(皿が落ちた。)
  • hat det met.(皿が落ちなかった。)
  • hat or met.(皿が落ちている。)

敬語[]

尊敬語、謙譲語、丁寧語の三種が存在する。

尊敬語[]

動詞の前にmistを付ける。

さらに動詞は丁寧形を用い、代詞は男性の場合、pikko位相、女性の場合、女性敬体を用いる。

  • ti ku tu al an (君がこれを私に言う。)
  • sala mist rens tu a men. (あなたがこれを私に仰られる。) pikko位相
  • halka mist rens tu a meid. (あなたがこれを私に仰られる。) 女性敬体
謙譲語[]

mir yuus(~させてください)が文頭に付く。

さらに動詞は丁寧形を用い、代詞は男性の場合、pikko位相、女性の場合、女性敬体を用いる。

  • an ku tu. (私がこれを言う)
  • mir yuus men rens tu. (直訳:僕にこれを申させてください。 意訳:僕がこれを申し上げます。) pikko位相
  • myun yuus meid rens tu. (直訳:私にこれを申させてください。 意訳:私がこれを申し上げます。) 女性敬体
丁寧語[]

名詞の前に丁寧の接頭辞an-をつける。文末に丁寧語文末純詞aata、女性の場合はaanoを付ける。

  • an fit veld a ti (私はあなたに酒を与える)
  • mir yuus men fit anveld a sala aata. (僕はお酒を貴方様に差し上げます。)
  • myun yuus meid fit anveld a halka aano. (私はお酒を貴方様に差し上げます。)

形容詞[]

形容詞は名詞の後ろにつく。

  • ket (猫)
  • ket kai (大きな猫)

ただし複合語の場合、前につく。この点はインドネシア語などと異なる。

  • vala (病院)
  • kaivala (大病院)

副詞[]

副詞は一般副詞(leimfreyu)と純副詞(levafreyu)に分かれる。純副詞は法副詞(yunerfreyu)と遊離副詞(dalsfreyu)に分かれる。

一般副詞は「形容詞+el」でつくられる副詞である。母音で終わる形容詞の場合は「形容詞+l」になる。

  • vien (強い)
  • vienel (強く)
  • an badat elen vienel. (私は机を強く叩いた。)
  • axma (論理的)
  • axmal (論理的に)
  • la klosat axmal (彼は論理的に主張した。)

純副詞とは副詞化接尾辞-elを付けなくても副詞になる副詞である。そのうち遊離副詞は、lut(常に)やaluut(必ず)などのような頻度・確率を表す語が多い。これらは-elを付けない場合、動詞の直前におかれることが多い。

  • an xen etek. (私は茶を飲む)
  • an lut xen etek. (私はいつも茶を飲む。)
  • an vast tas. (私は試験に受かる)
  • an aluut vast tas. (私は必ず試験に受かる。)

それ以外はme(再び)のように動詞部の後方に置かれることが多い。

  • la luna (彼が来る)
  • la luna me (再び彼が来る)

法副詞は、動詞の後ろについて、可能・希望・提案などを示す。

関係詞[]

接続詞le関係詞に相当する文を作ることができる。


  • an inat min (私は女を見た)
  • min taut mesk (女が鞄を買った)
  • an inat min le taut mesk (私は鞄を買った女を見た)


接続詞leの直後に母音で始まる語が付いた場合、母音が省略されl' になる。 なお、指示代詞のle(あれ)の場合は、直後に母音で始まる語があっても、母音が省略されることはない。


  • ket xa le elen (あの机に猫がいる)
  • an siina ket (私は猫が好きだ)
  • ket l'an siina xa le elen (私が好きな猫があの机にいる)

語法[]

異言語を用いる者が使っても誤用が生じないように、語彙や慣用句の意味を詳細に定義し、辞書に語法や用例を多数収録している。エスペラントなどにはこのような配慮が少なく、話者ごとに異なるコロケーションを用いがちである。

例えば、日本語では「会議を開く」というが、英語では"Hold a meeting"(直訳:会議を抱える)という。そのため日本のエスペランティストはmalfermas konferencon、英語圏のエスペランティストはbrakumas konfereconと誤用することがありうる(正しくはkonferencas、会議を催す)。アルカの場合は語法や用例を調べることで「会議を開く」はar ataが正しいと分かる。

また一般的にアルカの単語は語義が狭く、例えばdan(深い)には「熟考した、濃密な、密集した、奥深い、彩度が高い、程度が甚だしい」のような意味はなく、「深い鍋」「深い谷」のように物理的な深さのみを示す。語義が広いと異言語話者が用いたとき誤用が生じやすいためである。

方言[]

アルカが使われる世界カルディアにはアルカの方言が存在する。標準語として使われるのは、アルバザードという大国の首都アルナで用いられているアルバザード北方方言である。同じアルバザード国内であっても、北部、南部、アルシア地方、カレンシア半島の各々で異なる。

外国語[]

異世界カルディアには様々な言語が存在し、アルカはその中のひとつでしかない。冠詞曲用が存在するルティア語、SOV型で開音節の割合が高い凪霧といった、アルカと異なるシステムを持つ言語がある。

よく用いる挨拶表現[]

  • soonoyun おはよう、こんにちは、こんばんは等
  • sentant (自分が依頼していないものにたいして)ありがとうございます
  • seeretis (自分が依頼したものにたいして)ありがとうございます、ごくろうさまです
  • vantant ごめんなさい、すいません(謝罪)
  • pentant ごめんなさい、残念です(自分が悪くない時同情で使う)
  • xante? すみません(呼びかけ)
  • passo, ilpasso 大丈夫

脚注[]

  1. 人工言語を言語学の範疇として研究することを主旨とした私設団体。

参考資料[]

多くは絶版しているため、無料電子出版を参照のこと。

外部リンク[]

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